moso magazine Issue 15―― 今週の「雑記」


まあプロ野球が開幕したわけだが、ご覧の通り全然盛り上がっていない。
前にここでプロ野球について書いたときには、今の時代に130試合以上もすっから飽きられるんだよ、という結論を出した。

あのときは、よくちまたで言われている原因に「巨人が弱いから」という理由をあることを挙げなかったが、そらえがよく言われているのは事実。
野球談義をするとき人は、巨人ファン対他球団ファン、あるいは巨人ファン対アンチ巨人という対立軸で話をすることがあるが、この場合アンチ巨人の人たちは、完膚無きまでに巨人を倒したいとは思ってはいるものの、「巨人よ、消えてなくなれ!」とは思っていないらしい。
よく巨人の成績が低迷すると、それにかこつけてプロ野球自体の人気の低迷も「巨人が弱いから」で説明する「アンチ巨人」の人がいる。そうなると、結局彼らは巨人のことが好きなのか、嫌いなのか。応援しているのか、応援していないのか。ファンなのかファンではないのかよくわからなくなってくる。
「巨人が元気ないからプロ野球がつまらない」から「巨人よ、もっと勝て!」というならば、結局みんな巨人ファンなわけで、「一党独裁」状態である。しかし、そんな勢力図でも熱狂できたのは、V9のころの今よりも娯楽が少なかった時代だけではないだろうか。
巨人が強かろうと、弱かろうと、野球の人気は変わらないと思うよ。


Jリーグは一時期の低迷から回復しつつあるがこちらも浦和の一党独裁になる危険性がある。
しかしそれでも、チームがプロ野球の比にならないぐらいあるので、その心配はないかもしれない。Jリーグには新潟や大分や、草津にまでチームがある。これらの地域の人はプロ野球しかなかった時代、いったいどこのチームを応援していたかというと、だいたい巨人だ。


テレビも今でこそフジテレビがヤクルトを、TBSが横浜をプッシュしているが、それ以前は結構酷かったと思う。
巨人は強くないとならないという「イデオロギー」はマスコミでは今だ根強く残っているらしく、プロ野球人気低迷は巨人だけを我々が持てはやしていたからだ、という話をした後に、巨人のキャンプ情報を流していたという笑い話もあるほど。
これは、彼らが毎年大晦日紅白歌合戦に視聴率バトルで負けていても、毎年のように紅白の話題を年末取り上げるという行動と似ている。
あれほど他局でPRすれば、そりゃ自然と紅白に注目が集まるよ。
ジジェク風にいえば、テレビ局っていうのは原則的に(最近はそうでもなくなってきたが)他局の番組がまるで存在しないかのように、他の局なんてこの世に存在しないかのように振舞うべきものなのに、紅白に関してだけはなぜかいつまでたっても別格のように報道され続ける。


最近「SPA!」か「AERA」に、今や人気も実力もパという記事が載っていたけれども、実際パ・リーグでも球場に客が入っているのは仙台と北海道ぐらい。このふたつも、フランチャイズになってまだ10年も経っていないから野球観戦が物珍しいのは確かで、この先どうなるかはわからない。


他にもプロ野球ファンというものはよくわからないところがあって、例の近鉄が消滅して12球団制から10球団制になるかもしれないという時に「プロ野球の危機」が叫ばれ、球団がなくすなという風に世論はなっていたはずなのに、それでも当の近鉄のホームである大阪ドームの試合の外野席はがんらがら。
結局「プロ野球の危機」を感じていたのは、チームが消滅した際に職にあぶれる選手だけだったのではないかという話もある。12球団存続は「子ども達のため」という理由も挙げられていたが、プロ野球ファンの子は明らかに減っているだろうし、今では他にも娯楽が腐るほどある。「『将来プロ野球選手』になる子ども達のために」であるとしても、プロになるほどの才能にめぐまれた逸材は最初からごく限られた人数でしかないのである。


それからスポーツファンの謎といえば、球場でプラカードなるものを掲げながら応援する人がいるが、あれはいったい誰のためにやっているんだというのを一回訊いてみたいと、いつも思う。あれは大抵打者側の応援しているのだが、外野席からだから到底見えるとは思わないし、見えてもあれでバッティングがどうとなるわけではないし。いや、僕は別に怒っているわけでなくて、純粋に不思議だから訊いてみたい。でも、あれがあると後ろの人が試合が見にくくなるだろうから、ちょっとは苛ついているのかな。
あのプラカードは作っているところもみたことないし、いったいどこで作って、何の意図があってあれを掲げるのか、訊いてみたい。


プラカードといえば、今シーズンから阪神へ去ってしまった元カープの新井がまだ広島に在籍していたときの、ある日のホームゲームのテレビ中継。
例の「あのね、あのね、あのねのね」の達川光男が解説していたのだが、新井の打席の最中カメラが外野席で二枚のプラカードを持って応援していたカップルをとらえた。そのカップルはドジってこちら側から「新」「井」と見えなければならないところを「井」「新」と逆さにしてしまっていて、本人らは気づいていない。
解説のアナウンサーが「あのカップル、字が逆さになってますね〜、達川さん」と達川に話をフッたら、「そうですね、新井はインコースに狙いを絞ってますね」と達川は達川でぜんぜん話を聞いてねぇ。
天然ボケに天然ボケをかぶせるという具合で、地方の中継はなんとも緩い空間なのだが、広島はファンの方も十二分に緩くて、応援するチームの勝利とか優勝とかにそれほど頓着がないのだろうか、毎年調子がいい時は応援するが、5位6位になるとすぐに「捨てシーズン」にして、応援しなくなる。
女心は秋の風とはよく言ったもんで、というかこの言葉も古いか。


緩いのはチームの経営も同じで、広島は「阪神のサテライト」「阪神の二軍」と揶揄されるようになって久しいが、毎年のように他球団にいい選手を引き抜かれていく。
去年も新井を無事阪神のために「育て上げました」。
エースの黒田も出てったから、エースと4番を同時に失うという悲劇なのだが、新井はFA宣言の記者会見で、涙ながらに「カープが好きです」といっていたが、好きなら残れよと。理由はあきらかに「お金」の問題であるが、お金で動いたって彼はなんら責められる筋合いはないのである。だってプロなんだもん。プロ野球選手って、野球でお金を稼いでいる人のことでしょ?
それなのにそれを曖昧にする、そこらへんの偽善が人間としてあまり好きになれない。

たしかに黒田もドジャース入団で、カープの今年の全選手の総額を上回る、目ん球が飛び出るほどの年俸をもらっているが、それでも彼は「優勝できるチームで戦いたかった」という移籍理由のコメントをした。優勝は確かに今の広島には望めないことだから、こちらの方が年収が上がったにもかかわらず誠実に思えてくる。


そんな涙涙の退団会見をした新井は、先日1000本安打をチームメイトの兄貴こと金本(この人も元広島)の2000本安打と同じ試合で打って、二人して広島時代には見たことないほどの満面の笑みを浮かべて喜んでいた。


そういえば、速水もこみちの新ドラマ「絶対彼氏」、始まるそうです。
彼の演技が「ちょっとアレ」なのはもはや周知の事実になりつつありますが、今回の彼の役柄は「サイボーグ」。
これはどういうことなんだろ。
「機械のようなぎこちない演技ならむしろ得意だろ」という皮肉が込められているんでしょうか。

もこみちさんは「連ドラクローザー」の異名をもっていらっしゃいまして、彼は出たドラマを途中で打ち切りにするという「特殊能力」を持っているのです。大リーグでいうとクローザー=抑え、またはライツアウト(消灯)というやつですね。
人気マンガが原作でも無問題。彼にかかればその熱さえも「鎮火」するのです。
ヒロインは相武紗季。彼女のファンである僕からすれば、できるだけ彼女の演技が見続けていたいので、今回は彼のその汚名を返上する活躍に期待したいです。


(追記)
新井のようにFAで出て行った選手に対しては、元々いたチームのホームゲームで、ファンがブーイングを浴びせるというのがプロスポーツの慣例になっているが、FAでない場合はどうするんだろう。
例えば、そのチームで戦力外通告を受けて年末のトライアウトで他のチームに拾われた選手とか、元々在籍したチームのホームゲームではどういうあつかわれ方をするんだろうか。他にもトレードとかがある。


もしFA移籍と同様にブーイングを浴びるているのであれば、理不尽な話だ。
男をフッておいて、その男が他の女と付き合いはじめたら「ムキーッ!」とハンカチをかむ女みたいだ。まあ、そんな女が実在したらの話だけども。


イマダ