オークションなんてしなければよかった。 後悔12日目



オーストラリア人男性の44年分の人生が、約4000万円で落札されたらしい。


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080630-00000885-reu-int


イアン・アッシャーさんは、新しい人生を始めるために、今までの「人生」すなわち家や車、持ち物全てに、仕事、そして友人までを全て合わせて競売にかけたのだそうだ。人生の船出のために4000万円とは、安いだろうか高いだろうか。



「おいおい仕事やら友人はどうやって譲るんだい?」と率直な疑問が湧くが、それらはきちんと引継ぎ期間を設けて、友人にいたっては紹介までするのだという。ちゃんとしてるなアッシャー。いわゆる「モノ」も、家やジェットスキー、DVDなどなどこまごましたものも合わせて「人生」の出品とは、「その発想はなかったわ」である。


5年の結婚生活の後に離婚、それを機に出品を決意したアッシャーさん。パスポートと財布、カバンに詰めた衣類だけを持って、彼は自分探しの旅に出るらしい。どこかの歌詞にあったようなシチュエーションだが、元気にやっていけるだろうか。やっていって欲しい。



そういえば何年か前に、処女を競売にかけたというニュースもあった。調べなおしてみると、出品(?)したのはイギリスのレズビアンの18歳少女。44歳のエンジニアに166万円で落札され、一夜をともにしたそうだ。「男にキスされると悪寒がした」という感想とともに少しだけ話題になったのを思い出した。


なんとも、競売という文化は面白い。
この場合、売る側も売る側だが、買う側も買う側である。



しばしば「チャリティーオークション」というものが開かれる。「この売り上げは、被災地や恵まれない人たちのために使われます」という名目の元に、著名人やタレントがよく分からないものを出品して、落札させる素晴らしいイベントだ。


あれを見ていてどこからか湧いてくる違和感は、何なのだろう。
買う人の気持ちはなんとなく分かる。芸能人の使用済み○○(というとエッチだが)やら、訳の分からない絵でも欲しくなって然りだろうし、そうして買うことで満足したり、話のネタになるなら万々歳だ。芸能人にとっても、一見、対価を得ない売り物をしているのでチャリティーっちゃチャリティーなのだが、彼らには結果的に好感度や仕事という別の形をとって返ってくる。募金を受け取る被災者や恵まれない人たちが何の損もしていないのは言うまでもない。


なんとこれは流行のwin-win-winの関係ではないか。誰も損をしないこんなイベント、やらないわけにはいかない。だが、世の中そんなに上手い話があるわけない。どこかにlose-lose-loseの関係に陥っている人たちがいるはずである。


とした時、チャリティーで好感度を上げたタレントが出演するCMの商品を買うのは、僕らだ。好感度を上げたアーティストのCDを買うのは僕らだ。望まない募金を強いられているのである。チャリティーなんてせこいことをしなくても、自分の仕事でお金を稼いで、それを寄付してくれればいいではないか。なぜあんなことをするのか。



処女も、人生も、どこか納得がいくのはやはりきちんと彼らが対価を得ているからだ。
しかしチャリティーオークションが納得できないのは、不特定多数の人たちから無意味に金を巻き上げられてしまう点にある。お金は巡るものだから、と言ってしまえばそれまでだが、「するつもりもない募金」を払った人には、きちんと証明書か何かを送っておいて欲しいものである。


そんなことを言いつつも、
チャリティーオークション番組から目が離せないことに、
後悔した。



おおはし