ananなんて読まなければよかった。 後悔17日目



今年も恒例の、雑誌『anan』「最新版 SEXで恋はもっとときめく!」特集号が発売された。バイト先の編集さんが参考資料に購入したものをいただいけることになったので、遠慮なく持ち帰る。どう見ても強面ヤンキーの土屋アンナが『さくらん』の主人公の時よろしくコワーイ顔で表紙を飾っているので、カバンの口から見えないようにしっかりと奥まで詰め込んで家まで帰った。


an・an (アン・アン) 2008年 8/6号 [雑誌]

an・an (アン・アン) 2008年 8/6号 [雑誌]


SEXレクチャーDVDや女性用テクニック講座、図解なんかがよく取り上げられて2chで(笑)の種になっているのを見たことはあったが、ananそのものを読んだことはなかったので、ソコソコの期待を胸にページをめくる。


・恋をもっとときめかせてくれる、ハッピーSEXの条件とは?
・五感を駆使して愛し合えば、セックスはもっと深く、官能的に。
・惑わし、虜にさせる。土屋アンナの美しき刺激。
・気持ちよくって、キレイになれる。最強マスタベーションのススメ。
・裸よりエロティックに見せる。セクシーランジェリー&コスチューム。
・なぜ増えてる?どうしたら解決?解明!セックスレス最新事情。
・感じ足りないあなたを変える、特別開講!オーガズム教室。
・どうして、あのとき、そうなるの!?教えて!男の性欲のすべて。
・一生、後悔しないために。知っておきたいSTD&避妊のこと。
・女のカラダの神秘ゾーン、もっと知りたい膣のこと!
・MEN’S ANAN SEX SPECIAL ISSUE 特別袋とじ企画
男たちよ、技と作法を磨くべし!女が求めるセックスはこれだ!

・読者1044人のアンケートで判明!みんなのセックスレポート2008
豊川悦司が読む、女が感じるエロティックノベル。
・“女子大学院生”研究家に聞く、進化するラブホテル最新ガイド・
・しぐさやファッションで丸分かり。あの男性のセックスタイプとは?
・みんなこんなに悩んでる!?今年こそ脱SEXコンプレックス。


次々と飛び込んでくる特集題目に、頭がクラクラする。目次を読んでいても、「もっと知りたい膣のこと!」に思わず笑ってしまった。いやはやこれはすごい。そして今回の目玉は「彼氏に読ませること前提」のメンズアンアン袋とじ企画と、天下のトヨエツが読む官能小説のようだ。一体どんな仕上がりになっているのだろう。


しかし、少しずつ読み進めていくにつれて僕を襲ったのは、強烈な既読感だった。あれ、これどっかで読んだことあるぞ、と。「ただの性欲処理じゃなくて、心と体が一つになったことを楽しみながらお互いの愛情を確かめ合うのがSEX。」「「たまには昼間からしたり、お香をたいたり、目隠しをしたり、浴衣を着たり、ちょっとした変化が二人の愛を燃え上がらせます。」あれ…。

思い出したのは、話題沸騰のベストセラー、アダム徳永大先生の『スローセックス実践入門』だった。男性向けに書かれたSEX指南書とあって、きっとananも参考にしたのだろう、ほとんど同じことが書いてあった。やはり人間はそうそう変わらない、ということか。相手の体に触れるか触れないかで愛撫する「アダムタッチ」は、ananでは「フェザータッチ」と名を変えて登場。アダム先生の指南を女性から男性にきちんと伝えること、が強調されていた。


スローセックス実践入門――真実の愛を育むために (講談社+α新書)

スローセックス実践入門――真実の愛を育むために (講談社+α新書)


続いてメンズアンアンだが、こちらはもうSPA!に散々書かれていたような内容が続く。8ページの特集だが、「男ども、女は性欲処理の道具じゃない。」ということを図解つきで示してくれているだけだった。ちゃんと髪の毛を撫でてあげなさい、ということらしい。

トヨエツのCDは、もはやネタとしてしか聞けなかった。映画『愛の流刑地』で存分に尻を見せてくれたトヨエツの姿が思い浮かんできて、5分で終了。37分も聞ける猛者はいるのだろうか。女性はこれで興奮できるのか?



さて、それよりも気になるのは前回の『ポニョ』同様、女性が狩りに出る社会の興隆である。男女平等がある程度実現した今、草食系ナヨナヨ男子をどげんかせんといかん!という風潮は、このananにも現れていた。セックスレスの記事では、「据え膳を喰えない男子たち!」「セックス“しない”快楽を感じる男性が増えてきた。」と連呼され、女性からのアプローチがカギを握るとの事。

待っているだけ陥ってしまう症状に、「30代処女スパイラル」「セカンドバージン現象」などとおどろおどろしい名前がつき、さらに女性を焦らせていた。少し前の小西真奈美のCMではないが、「女の子は、忙しいんですぅ。」と言ってしかるべき、だろう。



さてこのままの流れだと、「男も、セックスでキレイになる!」という特集が組まれるようになるだろうか。SPAや成人男性向けのライフスタイル誌なんかに、そういった記事が表れてくるかもしれない。男性専門というわけではないが、同じくマガジンハウスのフィットネス系雑誌Tarzanでも、SEX特集が組まれたりしていた。

今回のananも、特集が終わった99ページ以降、100〜134ページまで続く広告の8割は、美容整形関連のものだった。これが男性向けの雑誌にも載り、男が整形する時代もそう遠くないかもしれない。そうなると今度は、男性向けの性器コンプレックス解消クリニックの広告の女性版が登場してくることになるのか。「深さ3倍!」「女の締まり、回復!」「ひとつ上野、女」なんてキャッチコピーと共に、上野クリニックの広告が、女性雑誌に載る日も、そう遠くないかもしれない。

はて、そうなった時、お互いの美醜の関係は、どうやって計られるのだろう?全てが相対化してしまった時、好みの問題になってしまった時、人は果たして「これが自分の好みだ」と自覚することができるだろうか?
なんとなく、現状のままでもそっちに転んでも、判断基準がつかめないことに、
後悔した。


おおはし