「婚活時代」がやってきて、「崖っぷち高齢独身者」になるかもしれない・・・


――issue28


別に婚期を逃してしまった負け犬OLであるわけでもないのに、何かの巡り合わせで最近結婚とか家族関連の本ばかり読みあさっている筆者であるが、樋口靖彦著『崖っぷち高齢独身者』は、さすがに笑ってはいられなかった。

先日、8歳年下のバレエダンサーとの結婚を発表した女優の真矢みきが、今週の火曜の「とくダネ!」にゲストコメンテーターとして出演していた。番組冒頭でオヅラさんに、「正直もう結婚はあきらめていたでしょう」と訊かれると、彼女は「いえ、そんな意識はまったくありませんでした」とさわやかに答えていた。


そりゃそうだろう。
彼女は魅力的な外見を持ち、そして芸能界という華やかな仕事をしているところから察するに、おそらくコミュニケーション能力も高いだろし、収入の心配もないだろう。そんな彼女なら、そもそも今までなぜパートナーがいなかったのかが疑問であり、彼女が結婚するのであるならば、いくら43歳であろうと納得できる。


43歳といえば、本書における「38歳以上の独身男性、33歳以上の独身女性」という高齢独身者の定義に、思いっきり当てはまる。だから真矢みきが上手くいったからといって、我々一般人が高齢独身者になるまでのんびりと構えて入れる、というわけではない。
本書で読めばわかる。一般人の高齢独身者で、とくに身体的ステイタスも社会的ステイタスもないが結婚したいという人間が「婚活」をするその先には、厳しい厳しい茨の道が待っている、ということを。


本書ではお見合いパーティーや結婚相談所の内情、実践と対策が解説される。
そういうものの仕組みを知ったことで感じるのは、まず第一にそれが非常にシビアな市場であるということ。当たり前だけどもパーティーに来る人、結婚相談所を介して出会う人は、結婚を前提に、真剣な交際を求めてその場に来ている(中には冷やかし程度の人間もいるらしいが)。合コンのように、「あわよくば・・・」という心持ちでない。変な話、男も女も誰かを必ず買うつもりで来ているのだ。


それだけならば、結婚にかぎらず一般的な市場の売り買いの関係と似ている。結婚にまつわるこれらの市場が普通のそれとちょっと違うのは、自分が買い手であるのと同時に相手にとっての売り手でもあるということ。要するに、選ぶ側であり選ばれる側でもあるというわけ。売り上手でもあり、買い上手でもなければならないのだ。


自分が「買った!」と思ったとしても、相手に自分が買われなかったら、「商談」は成立しないし、反対に相手に「買った!」と思われたとしても、相手を自分が買いたくなかったら、「商談」は成立しないのだ。


ここでもう一つ、普通の市場と違うところがある。それは「時が経つほど必ず値が下がる」ということ。骨董品と違って、結婚の対象としての自分とは、時が経っても値は上がらず、下がる一方なのだ。
だから、この市場ではモテているだけではダメなのだ。売る(モテる)だけでなく、最終的には必ず自ら誰かを買わなくてはならない。そうでなければ、結局婚活する意味がなくなってしまう。


ここで明記しておかなければならないのは、そこが中年になるまで「結婚できなかった者」同士からなる市場である、ということだ。今あなたが想像しているのが、もし、街をかっ歩しているふつうのレディース&ジェントルマンの集いであるならば、すぐさま心の消しゴムでその光景に修正を加えるべきだ。参考までに、結婚相談所で出会った68人の女性のうち、これから人生をともにしたいと思えた人はたったの2人だったという情報を書いておこう。


そういう意味で、高齢独身者の婚活市場は二重の苦痛にまみれている。
モテない男女にとっては、自分を買ってくれる相手がいないつらさ。
モテる男女にとっては、自分を売るに値する相手がいないつらさだ。


イマダ